イベントでは売れた。オンラインショップにも注文が入った。委託先から販売報告も届いた。
それなのに、銀行口座へ入った金額と、自分で数えた売上が合わない。そんな状態になっていませんか?
売上と入金額が違うのは、必ずしも記録ミスとは限りません。販売手数料、決済手数料、送料、返金、入金待ち、振込対象期間の違いがあると、商品代金の合計と実際の入金額は一致しません。
この記事では、minneやBASEなどのオンライン販売、Squareなどを使ったイベント販売、委託販売の数字を、1回の振込・精算ごとに確認する手順を整理します。
この記事の金額例は、照合手順を説明するための架空取引です。実際の手数料、返金、売上を記録する時期、税務上の扱いは、利用サービスの明細・契約・対象年度の公式案内に従って確認してください。
売上と入金額が同じにならない5つの理由
売上と入金額が合わないときは、最初に次の5つを確認します。
- 販売手数料や決済手数料が引かれている
- 送料が売上と一緒に受け取られる場合と、別に支払う場合がある
- キャンセルや返金が同じ振込期間に含まれている
- 売れた日と入金される日が違う
- 現金売上は銀行へ入金するまで口座残高に表れない
銀行口座に入った金額だけを売上として記録すると、売上や手数料を正しく振り返れなくなります。反対に、注文データと銀行入金の両方を新しい売上として登録すると、売上を二重に数えることがあります。
まず、注文・販売の記録と、実際の入金記録を分けて持ちましょう。
最初に集める4つの資料
照合を始める前に、販売場所ごとに次の資料を集めます。
- 注文・販売明細
- 販売手数料、決済手数料、送料、返金の明細
- 振込ID・対象期間、振込手数料、事務手数料、繰越金が分かる振込予定または精算書
- 銀行口座の入金明細、イベント現金の締め記録
画面の上部に表示される「売上合計」だけで判断せず、できるだけ注文単位・決済単位の明細を確認します。
注文ごとに差し引かれる費用と、1回の振込・申請ごとに差し引かれる費用は分けて確認します。注文明細だけで差額が説明できないときは、振込手数料、事務手数料、過去注文の返金、前月からの繰越を振込明細で探します。
照合表に入れたい12項目
スプレッドシートや会計ソフトへ、次の項目を分けて記録します。
| 項目 | 何を記録するか |
|---|---|
| 照合用の販売日・取引日 | 注文・決済・精算の明細同士を結び付けるための日付。税務上の収入計上日をこの記事だけで決めるものではない |
| 販売場所 | minne、BASE、イベント、委託先など |
| 注文・取引番号 | 明細と照合できる番号 |
| 振込ID・対象期間 | どの振込・精算に含まれる取引かを確認できる番号と期間 |
| 売上の内訳 | 商品代金と購入者負担送料を明細どおり分け、手数料を引く前の金額を記録 |
| 注文単位の手数料 | 販売・決済・サービス利用など、注文ごとに差し引かれる金額 |
| 振込単位の手数料 | 振込手数料、事務手数料、お急ぎ振込等の費用 |
| 送料 | 売上から引かれたのか、自分が別に支払ったのか |
| 返金・キャンセル | 元の注文と対応する金額・日付 |
| 前月等からの繰越 | 今回の振込へ加算・持越しされた金額 |
| 入金予定額 | 今回の振込に含まれる予定額 |
| 実際の入金日・入金額 | 銀行口座や現金締めで確認した結果 |
この表の日付は、注文・決済・振込を照合するための記録です。実際の入金日も別に残しますが、税務上どの日を収入計上日とするかは、取引内容・契約・対象年度の公式案内に沿って別途確認します。
購入者が負担した送料が販売明細に含まれる場合は、商品代金と送料を同じ「入金額」へまとめず、明細に沿って内訳を残します。自分が配送会社へ支払った送料とも区別してください。
無料テンプレートから記録を始めたい方は、先にハンドメイド作家の売上管理スプレッドシートを確認してください。この記事では、その記録と入金明細を照合する部分に絞って説明します。
架空の5取引で確認する
次は、照合方法を説明するための架空例です。実在の作家・ブランド・サービス利用実績ではありません。手数料率・手数料金額も説明用の架空値で、各サービスの現在の料金を示すものではありません。
オンライン販売A、カード決済、委託販売の8,500円・7,800円・8,400円は、それぞれ別サービスについて注文単位の費用を引いた暫定差引額です。確定した振込額や、3つを合算した1回の振込額ではありません。現金5,000円も銀行振込とは別枠で現金残高と照合します。
| 販売場所・取引 | 売上 | 注文単位の手数料等 | 返金 | 暫定差引額の考え方 |
|---|---|---|---|---|
| オンライン販売A | 10,000円 | 販売手数料1,000円、売上から差し引かれる送料500円 | 0円 | 8,500円 |
| イベントのカード決済 | 8,000円 | 決済手数料200円 | 0円 | 7,800円 |
| イベントの現金販売 | 5,000円 | 0円 | 0円 | 銀行振込ではなく現金5,000円を確認 |
| 委託販売 | 12,000円 | 委託手数料3,600円 | 0円 | 8,400円 |
| 過去注文の返金 | 0円 | 0円 | 4,000円 | どの振込から差し引かれるかを振込明細で確認 |
この表で大切なのは、手数料率の正しさを覚えることではありません。売上、手数料、送料、返金、入金を別の列にすることです。
オンライン販売Aの送料500円は、販売サービス側が入金から差し引いた架空例です。自分が配送会社へ別に支払った送料なら、同じ500円を振込額の計算でもう一度引かないようにします。
返金4,000円がどの振込へ反映されるかは、サービスの明細で確認します。元の売上行と返金行を結び付けておくと、数か月後でも理由を説明しやすくなります。
照合が完了するところまで確認する
オンライン販売Aだけを、1回の銀行入金と照合する架空例です。過去注文の返金4,000円がこの振込に含まれ、振込手数料200円が差し引かれた前提とします。
| 確認項目 | 金額 |
|---|---|
| オンライン販売Aの暫定差引額 | 8,500円 |
| 過去注文の返金 | −4,000円 |
| 今回の振込手数料 | −200円 |
| 振込明細の実振込額 | 4,300円 |
| 銀行口座の実入金額 | 4,300円 |
8,500円 − 4,000円 − 200円 = 4,300円となり、振込明細の実振込額と銀行入金が一致しました。
記録のメモ例:
過去注文○番の返金4,000円と振込手数料200円を反映。振込○番の実振込額4,300円と銀行入金4,300円が一致。
この照合では、別販路のカード決済7,800円、委託販売8,400円、現金5,000円を足しません。それぞれ別の振込明細・精算書・現金締めと照合します。
1回の振込ごとに照合する5ステップ
1. 振込の対象期間を確認する
最初に、今回の振込が何日から何日までの売上を対象にしているかを確認します。
売れた日で絞るのか、申込日で絞るのか、発送日や決済完了日で絞るのかはサービスによって違います。自分の月末だけで区切らず、振込明細の対象期間を先に見ましょう。
2. 対象期間の取引を並べる
注文番号、販売日、売上、手数料、送料、返金を1行ずつ並べます。
委託販売の場合は、納品した数ではなく、委託先の販売報告で売れた数を確認します。販売報告、返却、追加納品、精算書をつなげる方法は、ハンドメイド委託販売の始め方でも整理しています。
3. 入金予定額を計算する
売上から、注文単位で差し引かれる販売・決済手数料や送料を分けます。次に振込明細を見て、振込手数料、事務手数料、返金、繰越金などを加減し、今回の実振込額を確認します。
式を1本にまとめるより、差し引かれた理由ごとに列を分ける方が、翌月の確認が楽になります。
4. 銀行入金・現金残高と照合する
計算した入金予定額と、銀行口座へ実際に入った金額を比べます。
イベントの現金売上は、銀行振込とは別に確認します。当日の開始時釣り銭、追加した釣り銭、現金売上、現金での返金・支払い、途中の持ち出し、終了時の現金残高を分けておくと、差額を探しやすくなります。
Squareをイベントで使う場合の準備や端末選びは、Square決済の導入判断と使い方で確認できます。
5. 差額の理由を1行で残す
金額が合わなければ、次を順番に確認します。
- 前回の未入金分が含まれていないか
- 返金やキャンセルが後から反映されていないか
- 振込手数料・事務手数料が注文明細とは別に引かれていないか
- 前月等からの繰越金が加算されていないか
- 手数料の税込・税抜、端数処理が違わないか
- 送料を二重に引いていないか
- 現金売上を銀行入金だけで見ていないか
- 注文データと銀行明細の両方を売上にしていないか
差額を無理にゼロへ合わせず、「返金反映待ち」「次回振込」「委託先へ確認」など、理由と次の確認日を残します。
販売場所ごとの注意点
minneなどのマーケット
minneでは、注文単位の売上を確認した後、会員ページやアプリの「売上・入金」で入金予定額を確認します。過去の振込は、Webブラウザの「売上確認」から「入金を確認する」へ進み、入金一覧で確認できます。
振込額は、作品価格・購入オプション価格・送料を含む売上代金から、かんたんミンネ便利用料、販売手数料、振込手数料を差し引き、前月繰越金を加えて計算されます。注文IDごとの費用と、1回の振込ごとの振込手数料を混ぜないようにします。
また、振込対象は単純な注文日基準ではありません。minne公式では、発送完了メールを送信した日が売上確定日と案内されています。今回の振込対象期間と、発送完了メールを送信した日を照合してください。
公式案内:売上金の振込について
BASEなどのネットショップ
BASEでは、公式の「売上データダウンロード App」で、注文側の売上CSVと、銀行振込側の振込申請CSVを分けて確認します。
売上CSVでは、発送済みの注文、注文ID、送料、購入者支払金額、BASEかんたん決済手数料、サービス利用料、売上残高計上額などを確認します。振込申請CSVでは、申請日、振込申請額、振込手数料、事務手数料、お急ぎ・最速振込手数料、実振込額を確認し、その実振込額を銀行口座の入金と照合します。
注文から計算した売上残高と現在のショップ残高が合わない場合は、同Appの入出金履歴CSVで、残高が増減した日時・項目・金額を確認します。
公式案内:
Squareなどのキャッシュレス決済
カード等の売上と手数料、振込予定、実際の入金を照合します。現金をSquare POSへ記録していても、現金売上自体がSquareから銀行へ振り込まれるわけではありません。
委託販売
納品数と販売数を混ぜないことが大切です。委託先の販売報告、手数料、返却数、追加納品、精算日を1本につなげます。契約書や精算書で、手数料の計算方法と税込・税抜の扱いも確認します。
補足:MOSHなどの講座・予約販売
MOSHの現在の公式案内では、月次・日次合計は申込ベースで、その後のキャンセル・返金・チャージバックが合計から遡って消えるとは限りません。月次資料を作るときは、売上一覧の個別行と振込明細を確認します。
スプレッドシートから会計ソフトへ移る目安
販売場所が1つで件数が少なく、月末に明細と残高を確認できるなら、最初はスプレッドシートでも管理できます。
次のような状態になったら、会計ソフトの連携や明細取り込みを検討する余地があります。
- 販売場所が増え、同じ売上を二重入力しやすい
- 銀行やカードの明細転記に時間がかかる
- 毎月、手数料や返金の差額探しを繰り返している
- 複数月の未入金や返金待ちを追いにくい
- 申告用の帳簿へ数字をつなげたい
CSV取得や自動連携は、取り込みや照合の完了を保証するものではありません。元明細との一致、重複、列形式を確認し、無料利用・体験では申告書の出力・提出やデータ出力に制限がないかを公式案内で確認しましょう。
明細の転記を減らしたい方へ
BASEやSquareなど、現在使っている販売先・口座に対応しているかを確認してから選ぶと、導入後の行き違いを減らせます。
マネーフォワードの対応サービス・料金・無料体験の条件を確認する
よくある質問
銀行へ振り込まれた金額だけを売上にしてよいですか?
振込額だけを見ると、販売手数料、送料、返金、未入金を見落とすことがあります。商品代金を含む売上と、差し引かれた項目、実際の入金を分けて記録してください。売上を記録する時期は、取引内容や契約等によって確認点が変わるため、対象年度の公式案内も確認します。
売上日と入金日は、どちらを記録すればよいですか?
両方を記録します。売上を確認するための日付と、実際に口座へ入った日を分けておくと、未入金や翌月振込を追いやすくなります。税務上の収入時期は入金日だけで一律に決めず、取引の内容や契約に応じて確認してください。
CSVを会計ソフトへ入れれば照合は終わりますか?
終わりではありません。列形式、重複、手数料・返金を元明細と照合してください。
金額がどうしても合わないときは?
1回の振込に対象を絞り、注文番号、対象期間、手数料、送料、返金、未入金を順番に確認します。差額を無理に推測で埋めず、利用サービスへ確認した内容と確認日を残してください。税務上の扱いを判断できない場合は、税務署や税理士へ相談します。
まとめ:売上・手数料・返金・入金を1本につなげよう
売上と入金額が合わないときは、銀行口座の数字だけから原因を探すのではなく、次の順番で確認します。
- 振込の対象期間を確認する
- 対象の注文・販売明細を並べる
- 手数料、送料、返金を分ける
- 入金予定額と実際の入金を比べる
- 差額の理由と次の確認日を残す
販売場所が増えても、1回の振込を1本の流れとして照合できれば、数字を追いやすくなります。
確定申告の要否や申告手順まで確認したい方は、ハンドメイド作家の確定申告へ進んでください。
